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酒屋の環境も変わってきた。

「今のままではメシを食っていけないかもしれない」


午前中に御用聞きして午後から配達。
免許制で守られていた酒屋業界。
新規参入しようと思っても出来なかった。
価格破壊もなく、いわゆる「メーカー希望小売価格」で販売出来た。

また、酒屋同士「暗黙の了解」みたいなものがあって、「このエリアはこの酒屋、あのエリアはあの酒屋」っていうのが普通で、他のエリアに攻め込む事をしなければ攻められる事もほぼ無かった。

だから、一度お客さんがつくと、酒屋店主と気が合わない等の事がないかぎり結構安泰な商いだったのが昔。


それからディスカウントストアの登場で価格破壊が始まって、「重いものは配達してもらうもの」という常識が覆り、「安ければ重くても自分で運ぶ」スタイルが広がってきた時に、先代の世代は大いに焦った。

訴訟を起こそうという動きもあったほど。
でも別に「酒は値引きしたらあかん」という法律がある訳でもなく、結局はディスカウントショップが大いに流行った。

缶ビール1ケースが余裕で5000円超えしてたのが、ディスカウントストアで4000円を下回る価格で販売。

そりゃ焦るわ。

先代もディスカウントの世界に入ろうかどうか悩んだ事もあったらしい。
でも結果、選んだのが『コンビニチェーンへの加盟』。

その経験を経て今、日本酒と焼酎に特化した酒屋をやってるけど、このスタイルで行こう!と決めたきっかけは【差別化】。

つまり、「今のままではメシを食っていけないかもしれない」という気持ちから。


先代もディスカウントストアの登場で「今のままではメシを食っていけないかもしれない」って思ったんだと思う。
で、当時は珍しかった「酒を売ってるコンビニ」に転換すべく、コンビニチェーンへの加盟を選んだ。


当時はホンマに画期的で、24時間営業だったり朝早くて夜遅くまでやってるコンビニはあっても「酒が売ってるコンビニ」はホンマになかったら経営もずっと上昇。ウチはこのままコンビニでやっていくんやろなーって思ってた。その当時は。

でも状況はどんどん変わる。
今度は酒の販売免許が自由化。

「これは全国のコンビニで酒を販売し出すやろな」
「そうなったら、ウチが『もともと酒屋やってん』っていう歴史は関係なくなるよな」
「駐車場も無くて24時間営業じゃないウチは確実に消え去る運命やろな」


ちょうどその頃、日本酒の世界のオモロさに気づいてしまってて、蔵に酒の仕込み体験に行かせてもらったり、新潟の酒屋さんの生き様が書かれた本を読んだり、「あ、もしかしたら酒屋って面白いかも」って感じつつある時やったから、

「よし、コンビニをやめて酒屋に戻ろう!せっかく先代が初代で開業した酒屋や。コンビニでうまいこといかなくて廃業なんて全然オモロない。俺、酒屋をやったことないし(スタートはコンビニやったから)、まだ29歳で独身やったし(求人を見たらだいたい35歳まで募集があったから、万が一あかんかったら廃業して外に働きに行こうって思った)、いっちょやってみよか!って思って今に至ります。


20年ちょっと酒屋をやってて、ありがたいことにご縁を頂ける蔵元さんもいて、なんとか酒屋でメシを食えるようになって。

これまた環境が大きく変わってきてるような気もしてて。

コロナ以降かな、「あ、もしかしたら変わってきてるかも」って思ったのは。

もともと、酒屋さんで専門的にやってるとことは、全部が全部じゃないやろうけど、「今のままではメシを食えないかもしれない」というとこから【差別化のひとつ】として【地酒専門店】を選んだんじゃないかと思ってます。

いわゆる「町の酒屋」から「地酒専門店」になったって感じ。

「地酒専門店」ってだいたい立地がめっちゃ悪いところが多いと思うんですけど、これは実は正解で、

★立地が悪い
★価格破壊のビールに頼れない
★お客さんが高齢化

これいつかは衰退するだろうということで【差別化】をはかった結果の「地酒専門店」やと思います。
立地が良かったら人は来るし、専門店しなくても、もしかしたら商いをやっていけるのかもしれません。
立地が悪いから自分達で「わざわざ来て頂けるような店作りをしないといけない」って思ったのかもしれません。

きっとそういう理由から地酒専門店は「立地が悪い」と推測しております。

で、その【差別化】からスタートした酒屋さんが蔵元さんとしっかりタッグを組んでお互い猛烈に頑張ってきた結果、規模も大きくなって人も雇えるようになって、酒免許が自由化になってるから立地の良いところに支店を出すことが出来る。

新規じゃなく支店なので、本店が繋がっている蔵元さんの酒は、支店でも販売可能になる。
つまり、今から新しく蔵元さんに取引依頼せずに、本店の知名度を背負った状態で新しい地域に出店できてしまう。

これ最強ですよね。
ま、家賃や人件費等も含めいろいろあると思うんですが、裸一貫で今から酒屋をやっていこうと思っている人にとっては「羨ましすぎる」スタイルであることは間違いありません。

電気屋さんでも地酒をめっちゃ売ってる。
テナントとして酒屋が入るというパターンもあったり、百貨店に酒屋がテナントで入るっていうこともあるんですよねー。
その段階でテナントということは支店ですので、蒼々たる銘柄を抱えて出店できてしまうから、ほんと凄い事になったなーと。

支店を出す専門店さんがある一方で、支店は出さないけど配送トラックをたくさん持って、繁華街にどんどん入り込んでくる専門店さんも多数。っていうか、ほとんどされてるかもしれませんね。

ウチは大阪なんで、キタとかミナミって言われる梅田・難波とか、他にもたくさんある飲食店さん密集エリアに、いろんなところから攻め込んで行かれてる。

そこそこ規模がある酒屋さんだったら、だいたい大阪市内をメインの市場にしているんじゃないですかねー。
京都や神戸からもバンバン来てるみたいですし、大阪南部のほうからもミナミや梅田に配達に来てるって言うんやから、ホンマに凄いとしか言いようがない。

で、そこで繰り広げられるのは市場の取り合いやから、言い方悪いけど、「知名度のある酒のブランドを扱ってて、小ロットから配達してくれて、メニューを作ってくれるサービスもあって、いろいろ融通が利く、とにかく至れり尽くせり」みたいな、飲食店さんが酒屋を選定するというか、そういう利便性と酒のブランド等を取引基準にしているところもかなり多くあると聞いてます。

あとは、きっとこういうのもあるやろなー。
大きな市場にたくさんの飲食店さんを得意先として抱えてる酒屋さんに魅力を感じる蔵元さん。
「自分とこのお酒をたくさん売って欲しい」って思う心理は、どのメーカーさんもある程度持ってる思いですもんね。


だから、これは間違ってるかもしれんけど、ある程度規模のある酒屋さんが扱ってる銘柄を見ていると、「めちゃくちゃ似てる」。

みんな同じやん!って思ってしまうことがありますもんね。
で、もうそれだけ銘柄を持ってたらもうエエんとちゃうの!って第三者から見えても、その酒屋さんはやっぱり有名って言われる銘柄にバシッとアプローチしてたりするから、あー、そうなんやなーって思います。

前にある酒屋さんから聞いた事あるんですが、その酒屋さんは規模も大きく飲食店市場のウエイトが結構でかいお店。

そこの社長さんが言うには、

「飲食店店主さんから『あの銘柄ないの?』って言われた時に『ない』というと、他の酒屋さんから買われてしまう。だからウチはその扱ってない銘柄を扱う努力をする。その繰り返し。本音を言うと、とてもしんどいメニューだって作りたくない。自分がやりたい銘柄だけで商売がしたい。でも今はそれができないんだ。従業員さんにちゃんと給料も渡したいし、規模も大きくしたいと思ってるし。とにかくやりたくない事でもやっていかないと、飲食店市場には入っていけないんだ」


なるほど、その考えも間違いじゃない。


飲食店市場に応えていく為には、ある程度の銘柄力のある酒の取り扱いと配達等の機動力、メニュー作り等のソフトな面も兼ね備えて、またはちょっと飲食店経営のコンサル的な部分も持ってたりすると、飲食店さんからすれば、そりゃそんな酒屋さんと取引したいなーって思いますよねきっと。

蔵元さんもそうやわ。全ての蔵元さんではないにしても、将来を考えるとあの酒屋さんと繋がってたら結構な物量を期待できるかもって思うやろしねー。ま、それだけが理由ではないだろうけど、蔵元さんから見たその酒屋さんはきっと【魅力的に映る事はゼロではない】とは思います。

酒屋さんは飲食店さんからの要望も聞きつつ、「知名度のある売れる酒」を持つ蔵にオファーを出すかもしれない。
蔵元さんも行動力と機動力のある酒屋さんに魅力を感じるだろうし、そういう酒屋さんと手を組みたいと思うかもしれない。

規模が大きめの酒屋さんが扱う銘柄がだいたい似通ってきてしまってるのは、そういうところも要因になってる部分もあるだろうし、きっとたくさんの小さな地酒専門店があるんだろうけど、そういう酒屋さんの事を蔵元さんがそもそも知らないから、出会える酒屋さんが結果として、規模が少し大きめの酒屋さんになってるんやろなーとも思います。


これは予想ですけど、「酒蔵と酒屋が繋がる」という今までの方程式がこれからどんどん崩れていくような気もしてます。

「仙禽」が「ユナイテッドアローズ」とコラボすることだって業界からいろいろ言われたらしいですけど、よく考えたら、酒蔵は酒屋と繋がらないといけないというルールは無いですし、逆に「仙禽とユナイテッドアローズ」みたいに、意気投合したところで異業種同士がそれぞれのファン層を獲得出来るかもしれない(いわゆる、酒屋との付き合いだけでは得れなかった新しい市場のファン層)。

だからこれからもしかして、蔵元さんは、酒屋ではないジャンルの世界とタッグを組んでいくかもしれない。
よく考えたらこれって全然変でもなくおかしくもなくて、「これがアカン!」ではなく、酒屋がもうちょっと頭を柔軟にしていかなあかんのかもしれない。

自分とこの商いなんだから、人の目なんか気にすることなく(何をやっても言う奴は言う)自分達が楽しめて、それを見てくれてるお客さんが「あの酒屋なんかオモロそうやな」って思ってくれたり、「オモロそうな事やってるあの酒屋さんと絡んでみたいよな」って思ってくれる蔵元さんと出会えて、でもそれだけじゃアカンので、リアルに惚れた蔵の酒をしっかり伝えていく発信力と、それに伴う実績も残さなあかんし(ある程度の実績を作らないと「あいつ口だけやな」って思われるぞ)、結果、酒屋でメシを食っていけたら、もうそれでオッケー!

ということでダラダラ長文になってしまいました。
ホンマはまだまだダラダラ書きたいんですが、これ業界人以外の人が呼んでもちんぷんかんぷんのことばかりやから一体誰が読むねん!(そもそもこのブログを読んでくれる人が少なすぎ)って思うんですが、まあひとりよがりもアリかなと思って歴史と思いの備忘録的に書いてみました。

もし最後まで読んでくれる人がいてたらありがとうございます。
あとはゆっくり寝てください。





by kadoyasake2 | 2023-08-27 12:54